EOLを迎えるシステムを2カ月でクラウド移行――ハードウェアライフサイクルから脱却し、DX実現に向けた取り組みを大きく加速

株式会社伊予銀行 システム部担当課長 中原 隆志 氏

同行では、さまざまな銀行業務や行員業務用の効率化を図るためのシステム群を「小型分散システム」と定義しています。従来、これらのシステムは、VMware の仮想化基盤をベースに、オンプレミスで運用されてきました。順次 EOL を迎えるにあたり、同行ではクラウドへの移行を検討しました。

「さまざまな方法を検討しましたが、今回は再構築のためのエンジニアを確保するのが難しいこと、現在稼働しているアプリケーションがネイティブなクラウド環境での動作に対応していなかったこと、EOL が迫っていることといった理由から、VMware Cloud on AWS への移行を決めました」(中原氏)

VMware Cloud on AWS のL2延伸を活用し、限られた期間とリソースで移行を完了

「VMware Cloud on AWS」は、AWS(Amazon Web Services)のベアメタル環境で実行されるVMware仮想化基盤のマネージドサービスです。伊予銀行では、オンプレミス環境をVMwareで仮想化しており、さらに、DHD バンクへの取り組みのなかで、AWS の利用実績も積んでいました。そのため、今回の移行にあたっては「VMware Cloud on AWS」を活用することが、コストとスピードの両面で、最も効果的なソリューションと判断されました。

小型分散システムの移行プロジェクトは、2021年1月に開始されました。オンプレミスのVMware 環境で稼働しているシステムを、VMware Cloud on AWSに移す上で、技術面での大きな問題はなかったといいます。設計を経て、実際の移行作業は4~6月の、約2カ月で完了しました。

今回移行したシステムは、3世代に分かれた仮想化共通基盤で稼働していた5システム[Windows ServerをゲストOSとする複数VM(仮想マシン)]です。そのうち、2つは全行で利用するシステム、3つは本部向けシステムで、ユーザー数は全行員向けが2500人、本部向けが900人にのぼります。特に、全行で利用するシステムは銀行での業務に直結する重要なシステムが対象となっていました。

移行にあたっては、行内ネットワークとのみ接続する閉域ネットワークで構成されたVMware Cloud on AWSと、既存システムが利用する行内のネットワークとを仮想的なスイッチで接続する「L2延伸」を利用しました。L2延伸を利用することで、VMware Cloud on AWS 上に置かれたシステムは、あたかもオンプレミスで稼働しているかのように振る舞います。

伊予銀行の情報システムのグループ会社である、いよぎんコンピュータサービスの池田誠三氏は「L2延伸を利用したことで、システムのクラウドへの移行に伴うIP アドレスやネットワーク構成の大規模な変更を行わずに済みました。これは、負荷の高いテスト工数を大幅に削減することにも非常に貢献したと考えています」と話します。

EOLを迎えるシステムを2カ月でクラウド移行――ハードウェアライフサイクルから脱却し、DX実現に向けた取り組みを大きく加速

VMware Cloud on AWS の本番環境への切り替えは、入念な移行リハーサルを経て段階的に行われました。切り替えに先がけて、クラウド対応のレプリケーションツールを利用し、オンプレミスとクラウド上のVM(仮想マシン)を同期しておくことで、ユーザーの業務に影響を与えず切り替えることができたといいます。

「今回のプロジェクトは、コロナ禍で移動が制限されるなか、Web 会議なども活用しながら、協力会社と密に連携をとって進めました。ヴイエムウェアからもリモートでサポートを受けることができ、課題が発生するたびに迅速に解決できたことが、成功の要因だと考えています」(中原氏)

運用管理コストの大幅な合理化に期待。クラウドならではの活用方法も模索

オンプレミスのシステムをVMware Cloud on AWS へと短期間で移行し、ハードウェアライフサイクルから脱却できたことは、今後の伊予銀行におけるDXの取り組みにも、良い影響を与えると期待されています。

伊予銀行 システム部の小池勝彦氏は「VMware Cloud on AWS へ移行したことで、今後はハードウェアや仮想化基盤まわりの保守運用コストが大幅に圧縮できるはずです。これまでは自分たちで時間をかけて計画、運用していたバックアップや、ディザスタリカバリ環境なども、基本的にアウトソースできるのは大きいです。また、これまでオンプレミスで培ってきた仮想化基盤の管理スキームを、クラウドでもそのまま活かせることは、今後の運用でもメリットになると考えています」と話します。

また、いよぎんコンピュータサービスの渡部雅之氏は「今回は、オンプレミス上のシステムを、そのままの形でクラウドへ移すことがテーマでしたが、今後は、足りないリソースをノード追加で迅速に増強するなど、クラウド独自の利点を有効活用することも考えていきたいです」と話しました。

同行では引き続き、VMware Cloud on AWSを活用しながら、オンプレミスでEOLを迎えるものを中心に、システムのクラウド移行を進めていく計画です。

「クラウドネイティブで再構築をしたいけれど、期間やコストの面で難しいという場合でも、VMware Cloud on AWS を活用することで、その後にとれる選択肢は広がります。今回の移行を通じて、VMware を利用している企業で、オンプレミスで稼働しているシステムを、クラウド移行後も大幅な改修をせずに使い続けたいというニーズがある場合、VMware Cloud on AWSは、第一に検討すべきソリューションだと感じました」(小池氏)

●業界FINANCIAL SERVICE

●カスタマープロフィール愛媛県松山市に本店を置く地方銀行。国内の店舗網は、愛媛県を中心とした九州、中国、四国地方の瀬戸内圏のほか、東京都、近畿、東海地方に展開。インターネット支店も開設しており、「いよぎん」の愛称で親しまれる。ルーツは1878年に愛媛県初の銀行として設立された第二十九国立銀行で、2021年で創業143年を迎える。

●ユーザーコメント「オンプレミスの仮想化環境をクラウドへ移行する際、既存のシステムやアプリケーションをそのまま利用し続けたい、少ないリソースで短期間に移行したいというニーズに対して、VMware Cloud on AWSは、第一に検討すべきソリューションだと思います」――株式会社伊予銀行 システム部 小池 勝彦 氏

●導入製品・サービスVMware Cloud on AWS

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