「激闘」だった京王百貨店の基幹システム刷新、何が成功を導いたのか

京王百貨店 経営企画室 システム開発担当 統括マネージャー 杉山博一氏

杉山氏は、同社のDX(デジタルトランスフォーメーション)について、2018年の経済産業省の「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」の定義に沿うなら、基幹システムは「タイプ1(メインフレーム温存)の状況」、そして周辺システムは「タイプ3(オンプレの単純なクラウド化)」が混在していたと話す。

その背景には、ホストの運用期限が2020年3月に迫っていたこと、そして3つの「待ったなし」があった。1つ目は2019年10月の増税・軽減税率の導入など法規制への対応、2つ目はシステム老朽化への対応、3つ目は決済方法の多様化など商環境の変化への対応だ。なお、同社は2017年にグループのポイントサービスの統合、2018年秋には、業界初の友の会ネイティブアプリなど先進的な取り組みを進めていた。

「激闘」だった京王百貨店の基幹システム刷新、何が成功を導いたのか

実は、基幹システムの刷新に取り組むのは今回が初めてではない。2013年にも挑戦して断念したという経緯がある。その主な要因は、大手のITベンダー任せだったことにあると認識しており、今回は「激闘」として自分たちも果敢に挑んだ。

Autonomous Data Warehouseでデータ管理を容易に

今回のプロジェクトの編成は2018年、そして2019年10月に刷新プロジェクトがスタートした。当時まだ「DX」という言葉は今ほど使われていなかった。しかし、2017年10月に経営企画室がIT戦略をまとめた時から、経営側には「デジタルトランスフォーメーション」という言葉で、必要性を示していた。

「携帯電話に例えるなら、1987年からずっと“ガラケー”を使っている状態で、世の中の変化に耐えられない仕組みになっていました。労働力不足などの課題も含めて、DXで解消していこうと考えました。具体的にはインテリジェントなシステムにした上で、企業を活性化していくための仕組みを作ると経営層に対し説明しました」と杉山氏はいう。

プロジェクトには20社以上が関わり、人数にして200人を超えた。

基幹システムはアイティフォーの「RITS」を採用、ここで蓄積したデータを活用するための情報活用基盤として、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)と「Oracle Autonomous Data Warehouse」を導入した。この上に構築したのが「Keio Department Store Data Lake(KDSDL)」とするデータレイクだ。データの権利は自社に帰属するようにし、BIの「Yellowfin」を使ってユーザーがデータを閲覧できるようにした。

Autonomous Data Warehouseは学習による自動最適化を特徴の一つとしている。実際、数千万件ものデータを数秒で処理できる上、「データ量が増えても性能に影響することがない」と杉山氏。オンプレからのデータの出し入れも簡単だったと振り返る。OCI導入の決め手となったのは、データ管理だ。「データの管理はコスト高になる。Autonomous Data WarehouseはDBA(データベース管理者)が不要というところは大きかったです」と杉山氏は話す。