ファーウェイのWi-Fiルーターをレビュー 1万円切りコスパ最強か Wi-Fi 6ルータ「WiFi AX3」レビュー、160MHz対応で1万円切りはコスパ最強か

ボディはコンパクトかつスタイリッシュ、手軽に接続できる機能も用意

AX3は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax準拠の無線LANルータだ。ボディカラーはホワイトで、シンプルなデザイン。リビングでも寝室でも違和感なく設置できそうだ。本体サイズは約W131.9×D225×H30.9mmと、4本の外部アンテナを備えるWi-Fi 6対応ルータとしては比較的コンパクト。本体後方にあるアンテナは前後に約90°動く仕様で、基本的にはほぼ垂直に立てて利用することになる。

本体の上面中央にはボタンを用意。このボタンを押すだけで、「Huawei HiLink」に対応したWi-Fi子機と簡単に接続できる。加えてWPSもサポートしているので、WPS対応のWi-Fi子機(ノートPCやスマホ)との接続もたやすい。

さらに、本体上面の右下角にはNFCを搭載し、NFC対応Androidスマホをタッチするだけで接続できる「Huawei Share」も備える。こちらはNFC対応Androidスマホであれば、別途アプリなどは不要だ。家族が機器を接続する場合はもちろん、友人など来客が利用する場合でも便利だろう。ただ、スマホをタッチするだけでルータに接続可能というのは、セキュリティ的に不安な一面もある。Huawei Shareは機能をオフにもできるため、不安に感じるならオフでの運用をおすすめしたい。

160MHz幅2,402Mbpsの高速通信に対応し、セキュリティ性も優れる

無線LANの仕様だが、2.4GHz帯と5GHz帯のいずれも2ストリーム(2×2)対応のデュアルバンドだ。アンテナは外部に4本。2.4GHz帯と5GHz帯のそれぞれにパワーアンプを2個ずつ用意することで、電波強度を高めている。

通信速度は、2.4GHz帯が最大574Mbps、5GHz帯はバンド幅160MHzに対応しているため最大2,402Mbpsとなる。税別で1万円を下回る価格ながら、5GHz帯域で160MHz幅に対応して最大2,402Mbpsという高速な通信速度(規格値)は、ライバル製品に対する大きなアドバンテージとなりそうだ。

無線LANのSSIDは、標準では2.4GHz帯と5GHz帯で同一のSSIDを利用するようになっており、5GHz帯へ優先的に接続する設定。もちろん、2.4GHz帯と5GHz帯で個別のSSIDを指定して運用することも可能だ。

有線LANポートは本体後方に用意。WAN用(インターネット側)×1ポート、LAN用×3ポートの計4ポートを備え、いずれもギガビットイーサネット対応となる。

メインのプロセッサには、1.4GHz動作のクアッドコア「Gigahome 650」を採用。メモリも256MBと比較的大容量となっており、推奨接続クライアント数も128台と余裕がある。このほか、OFDMA、2ストリームのMU-MIMO、ビームフォーミングに対応する。

このGigahome 650はファーウェイの独自規格である「Wi-Fi 6 Plus」をサポート。Wi-Fi 6 Plusは、標準規格のWi-Fi 6との完全な互換性を確保しつつ、ファーウェイが独自に仕様を拡張したもので、通信の実効速度が高速化されるという。

具体的な仕組みは不明ながら、無線帯域の利用効率を高めることで実効速度の高速化を実現しているとのこと。特にWi-Fi 6 Plus対応クライアントとの間では最大限の高速化が実現されるとしている。

なお、2020年8月の時点でWi-Fi 6 Plus対応クライアント(子機)は、ファーウェイのスマホ「P40 Pro 5G」のみ。P40 Pro 5Gを接続すると、無線LANのアンテナピクトの横に「6+」の表記が確認できた。これによって、Wi-Fi 6 Plusで接続していることがわかるようになっている。

セキュリティ仕様は、国際セキュリティ評価基準「CC(Common Criteria)」の評価保証レベル「EAL5」を取得している。通常、商用向けネットワーク機器では「EAL4」の取得が推奨されているが、AX3はそれを上回るレベルの認証ということで、個人向けとしては非常にリッチなものだ。また、各種設定情報やユーザー情報を独立したセキュアゾーンに保存する「TrustZone」の用意や、不正アクセスを自動認識してブラックリストに追加しアクセスを遮断するといったセキュリティ機能「Huawei HomeSec」も搭載するなど、セキュリティ性の高さも特徴となっている。

合わせて、Wi-Fiの暗号化方式はWPA/WPA2に加え最新のWPA3に対応。クライアントのアクセス制限やペアレンタルコントロールなどの基本的なセキュリティ機能もしっかり用意している。

なお、国内の高機能無線LANルータのような豊富な付加機能はない。例えば、USBポートにHDDなどのストレージデバイスを接続して簡易ファイルサーバとして利用するといった機能は持たない。このあたりは、コストダウンを実現するためのものと考えていいだろう。

残念なのは、日本のISPが採用している「IPv6 over IPv4トンネリング(IPv6 IPoE)接続」に対応していない点だ。AX3自体はIPv6もサポートしているが、IPv6 IPoE非対応のため、v6プラスやTransix、OCNバーチャルコネクトなどの高速なISP接続サービスを利用できない。海外製ルータではよくあることだが、できれば今後のファームウェア更新などで実現してもらいたい。

Wi-Fi 6 Plusの優位性は確認が難しいが、実効速度は満足できる

では、実際にどの程度の速度が発揮されるのかチェックしていこう。速度チェックにはiPerf3を利用した。

Wi-Fi 6対応ノートPCであるASUSの「ExpertBook B9 B9450FA」をサーバとして、iPerf3をサーバモードで起動。そしてクライアントとして用意したスマートフォンは、Wi-Fi 6 Plus対応の「HUAWEI P40 Pro 5G」と、Wi-Fi 6対応のSamsung製「Galaxy S20 5G」の2台。この2台からサーバに設定したiPerf3にアクセスして速度を検証した。

ファーウェイのWi-Fiルーターをレビュー 1万円切りコスパ最強か Wi-Fi 6ルータ「WiFi AX3」レビュー、160MHz対応で1万円切りはコスパ最強か

無線LANの接続帯域は、もちろん5GHz帯域を利用。サーバPCはAX3と有線LAN(ギガビットイーサネット)で接続。さらに、比較としてバッファロー製のWi-Fi 6対応無線LANルータ「WXR-5950AX12」でも同様のテストを行った。無線LANルータ、サーバ用PC、クライアント用スマホは、すべて同一室内に設置している。

実効速度を計測する前に、各クライアントのリンク速度をチェック。サーバ用PCに搭載される無線LANモジュールはIntel製の「Wi-Fi 6 AX201」で、5GHz帯域は2ストリーム、160MHz幅での接続に対応。実際に、AX3との間で2.4Gbpsでのリンクを確認した。

続いてスマホだが、P40 Pro 5Gも5GHz帯域は2ストリーム、160MHz幅での接続に対応しており、こちらも2,401Mbpsでのリンクを確認。一方のS20 5Gは5GHz帯域で2ストリーム、80MHz幅での接続までの対応となり、リンク速度は1.2Gbpsだった。

では実効速度をチェック。今回のテストでは、サーバ用PCをギガビットイーサネットの有線LAN接続しているため、無線LANのリンク速度よりも遅く、ここがボトルネックとなる可能性が高い。

テスト結果も当然ながら1Gbpsを超えることはなかったが、いずれもギガビットイーサネットのほぼ上限の速度が引き出せている。結果を細かく見ると、リンク速度が速いP40 Pro 5GのほうがS20 5Gよりもやや高速だった。

P40 Pro 5Gの結果にのみ注目すると、WXR-5950AX12に接続した場合よりも、AX3に接続した場合のほうがいずれの結果もわずかに速い。数値的には誤差の範囲内ともいえるため、少々判断が難しい。ただ、複数回計測する中でもAX3のほうがわずかに高速というのは傾向として変わらなかったため、Wi-Fi 6 Plusが効果を発揮しているとしてもよさそうだ。

P40 Pro 5G・下り(Mbps)

WiFi AX3:919

WXR-5950AX12:903

P40 Pro 5G・上り(Mbps)

WiFi AX3:939

WXR-5950AX12:883

S20 5G・下り(Mbps)

WiFi AX3:826

WXR-5950AX12:891

S20 5G・上り(Mbps)

WiFi AX3:748

WXR-5950AX12:825

S20 5Gでは逆に、WXR-5950AX12接続のほうがAX3接続時よりも速かった。WXR-5950AX12はバッファローのハイエンドルータで、内部の仕様がAX3に比べて圧倒的にリッチなため、こういった差が出たと考えられる。ただ、WXR-5950AX12はAX3に比べて実売価格が3倍以上高価という点を考えると、AX3のコストパフォーマンスの高さが際立ってくる。

ただ、やはり無線LAN側で最大2,402Mbpsでの接続が可能なら、AX3の有線LAN側も2.5GbEに対応したり、LANポートを2つ束ねて高速化するリンクアグリゲーションに対応するなどの配慮が欲しいように思う。AX3の価格を考えると難しい部分もあるが、無線LAN側だけ高速だと十分に性能を引き出せないため、上位モデルとして高速な有線LANポートを備える製品も望みたい。

Wi-Fi 6・160MHz対応で税別1万円切りは破格

現在市販されているWi-Fi 6対応ルータの中には、1万円未満のエントリー製品もいくつか登場してきている。ただ、エントリー製品のほとんどは5GHz帯域で2ストリーム(80MHz幅)となり、速度(規格値)も最大1,201Mbpsだ。

そういった中でAX3は、税別で1万円切りという値段ながら、5GHz帯域で2ストリーム(160MHz幅)対応で最大2,402Mbps対応と、圧倒的に高速な接続が可能という点が大きな特徴となる。有線LANはギガビットイーサネットどまりなのでボトルネックとはなるが、無線LAN接続のクライアント間での通信速度は間違いなく有利なので、この点は競合製品に対する大きなアドバンテージとなるはずだ。

Wi-Fi 6 Plusについては、対応クライアントがほとんどないため、あまり優位点とはならない可能性が高い。もちろんWi-Fi 6との互換性は問題なく、おまけ程度に考えればいいだろう。機能面はシンプルだが、必要な機能はほぼ網羅しているし、セキュリティ機能も充実している。IPv6 IPoE非対応なのは残念だが、それを考慮してもコストパフォーマンスは高い。安価でも高速な無線LAN通信が行えるルータを探している人におすすめだ。