なぜ、5Gの「超低遅延」の実現に高精度な時刻同期が不可欠なのか?

図表1 TAE(Time Alignment Error)の計算

大元の基準となる時刻は、UTC(協定世界時)である。UTCは、GPSや準天頂衛星といったGNSS(全球測位衛星システム)から配信されている。このUTC信号を受信したグランドマスタクロックは、配下のスイッチへ時刻情報を配信。スイッチ内のバウンダリークロック(BC)で補正を行ったうえで、基地局に時刻情報を届ける。装置で内部処理する際に発生する時刻のズレであるTE(Time Error)は、一般的なBCで70ナノ秒、基地局自体で35ナノ秒だ。このケースでは、BCと2つの基地局のTEを加算することでTAEの値は求められる。つまり、70+35+35=140ナノ秒となり、先の65ナノ秒を優に超える。「グランドマスタクロック自体の時刻精度が悪い場合は、さらに最終的な値が大きくなる」(小山氏)。4Gまでのネットワーク構成では、大きな局舎にグランドマスタクロックを設置し、途中のBCを介して個々の基地局へ時刻情報を配信していたが、こうした構成では5Gの超低遅延は到底実現できないのである。そこで小山氏はこう強調する。「5Gでは、より精度の高いグランドマスタクロックを基地局側に設置することが不可欠になる」(図表2)。

図表2 LTE and 5GにおけるGM200の設置例(インドア配置例)

なぜ、5Gの「超低遅延」の実現に高精度な時刻同期が不可欠なのか?