モバイル業界は2020年の反省を踏まえ、2021年に新時代を切り開けるか?

1年前には思いもしなかった状況

 あらためて言うまでもなく、2020年は世界中がコロナ禍によって、大きなダメージを受ける一年となった。すでに、1年前(2020年初頭)にも「新型コロナウイルス」という言葉はニュースなどでも伝えられていたが、まだ対岸の火事を見るようで、まったく自分事として捉える状況にはなっていなかった。

 2020年2月に入り、一度はサムスンのGalaxy S20シリーズ発表の取材で、アメリカ・サンフランシスコに出かけたものの、2月下旬に予定されていたMWC Barcelona 2020は中止。

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  •  変更不可の航空券やキャンセル不可のホテルなどの事情もあり、筆者は数人のライター諸氏といっしょにスペイン・バルセロナに出向き、現地でファーウェイなどを取材しながら、オンライン開催となったソニーなどの発表イベントを中継で見るというリモート取材を行なう羽目になった。その後、海外イベントや海外取材はすべて中止となり、国内の取材も夏頃までは、オンライン開催やリモート取材が中心になった。

     この流れはすでに定着する傾向にあり、恒例のアップルの「Special Event」をはじめ、グーグル(Google)の発表イベントもオンライン開催になった。各携帯電話会社や国内外のメーカーの発表もオンラインを基本としながら、ごく一部については現地で製品のタッチ&トライを行なうのみとなっている。

    モバイル業界は2020年の反省を踏まえ、2021年に新時代を切り開けるか?

     これほどまでに自粛が徹底されたのは、過去に例がなく、東日本大震災のとき以上に、さまざまな活動が制限されることになった。

    在宅勤務の影響

     そんな自粛ムードの影響を受け、モバイル業界が縮小したかというと、必ずしもそうではなかった。

     端末販売などについては電気通信事業法改正の影響を受け、市場が大きく様変わりしたが、通信サービスの需要という観点で見ると、テレワークやリモートワークの需要が拡大したことで、5G対応料金プランで提供されるモバイルデータ通信の使い放題、光回線の新設やIPoE対応サービスへの乗り換えなど、 予想以上の活況だったとされる。

     法人向けサービスでは企業のリモートアクセスのための環境整備などで、各通信事業者への依頼がかなり増えたとも言われ、政府が掲げる「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の方針とも相まって、厳しいコロナ禍の中、通信業界全体としては、あらためてインフラサービスとしての強さを発揮した印象だ。

     しかし、その一方で、2020年夏以降、菅義偉首相と武田良太総務大臣による携帯電話料金値下げへ向けた強烈な圧力があり、2020年秋から年末に掛けて、各社は新料金プランを相次いで発表し、連日、携帯電話料金に関する報道も続いた。

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  •  過去にも携帯電話料金が話題になることは何度かあったが、今回はもっとも注目を集めた時期であり、消費者の関心もかなり高まったように見える。

     2020年はこの他にも各社の5Gサービスの開始、楽天の正式なサービス開始、NTT持株によるNTTドコモの完全子会社化、NTTグループ再編、国内外の端末メーカーの盛衰、金融サービスとの連携など、さまざまな話題が注目を集めた。

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  •  しかし、トータルで見ると、5Gという新しい世代の通信サービスが開始されたことに象徴されるように、業界として、いろいろな意味でひとつの大きな節目を迎えたように見える。コロナ禍という未曾有の危機において、モバイル業界としては需要拡大という底堅さを見せながら、その一方で、これまでの慣習にとらわれたままで、新しい様式や利用スタイル、ニーズに十分に応え切れない部分もクローズアップされた。

     取り上げたい項目はいくつもあるが、 ここからは3つのキーワードを軸に、2020年の反省を踏まえつつ、2021年への展望を考えてみたい。